「500円以下を愛し、源流へ」(1974年 その2)

小銭を握りしめ・・・今日はビールは要らないよ

学生時代の思い出の味“家系ラーメン”と綴ったが、しょっちゅう食べれたわけではなく、安価に空腹を満たしてくれたのは、古びた漫画や雑誌、スポーツ紙なとが店内にあり、何往復もしただろう出前のカブが軒先に停まっている、地元密着型の町中華だったような気がする。

ナルトとシナチク、こぶりな焼豚の素朴な醤油ラーメンが町中華ならでは。炒飯のパラパラ感が中華屋の試金石と言われたりもするが、貧乏な学生時代を経てきた身としては、味よりもコスパ、“ノーマルラーメン”の単価が500円未満=“町中華”だと思っている。

赤坂の隠れ家老舗町中華”珉珉”の名物”茄子カレー”

BS TBSで放送されている『町中華で飲ろうぜ』。
地元に溶け込む、懐かしい町中華を紹介する番組。
二部構成となっているこの番組のナレーションを担うのが、富澤美智恵氏と山路和弘氏。
財布に優しい町中華を紹介する番組に、フカヒレ級の豪華声優を起用しているそのギャップある構成は、一等地“港区赤坂”の静かな住宅街で町中華を営む”中華料理赤坂珉珉”のようである。

貧乏な学生の財布に優しく、
体力勝負のお勤め人のスタミナ源でもある“ラーメン”。
そんなエネルギー補給の代表格といえるのが、
全国に300店舗をチェーン展開する
ラーメンショップ”ではないだろうか。

源流・・・朝からラーメン食っちゃ悪いか?

通称“ラーショ”の本店、東京都大田区羽田にある“GOOD MORNING ラーメンショップ”は、朝6時から13時までの営業。夜間は走りっぱなしの長距離トラックドライバーには嬉しい営業時間。香ばしい“白髭ネギのごま油和え”のトッピングがたまらないラーショは、今日まで取材拒否を貫くベールに包まれた店にして、“家系ラーメン”の源流と言われている。

吉村家創業者・吉村実氏は、東京都大田区平和島の京浜トラックターミナルにかつてあったラーショで、ラーメン作りのノウハウを会得したそうだ。

吉村実氏満を辞しての独立店“吉村家”もまた早朝営業、大型車が往来する産業道路沿いでの立地であり、羽田のラーメンショップ(旧椿食堂)へのインスパイアが感じられる。

山河・・・顧みて恥じることない足跡を

さて、“源流”といえば、山梨県甲州市と埼玉県秩父市の県境にそびえる、標高約2000mの笠取山の頂近くに、沢の行き止まりを意味する“水干(みずひ)と呼ばれる、都民の生活用水20%をつかさどる“多摩川”の源流をご存知だろうか。

“巣篭もりに疲弊した”と叫ばれてきた昨今だったが、安全な水道水供給があるからこそ我々はじっと巣篭もれたことに改めて感謝するのだが、台風豪雨により、時として我々に牙を剥いてきた一級河川の“多摩川”。

訪れたこの日の源流は、静寂に干していた。
感動の“一滴”を拝もうと辿り着いたというのに。

達成と落胆が交錯しながらも、
ゼロからイチが生まれる原点、
機運が熟すそのときを研ぎ澄ますこととは、
得てしてこのような状況なのだろう。
ドヤ顔するな、恩着せがましくなるな、
数々のベンチャー企業の足跡にナレーションを添えてきた身としては思いを馳せてしまった。

多摩川の源流・笠取山の穏やかなせせらぎに対し、
群馬県沼田市の名瀑“吹割の滝”は、
“東洋のナイアガラ”と称されるダイナミックな景勝地。
群馬県北東部を流れる“片品川”が侵食し削り落とし、
多数の割れ目が生まれている。

永遠の水面の光増す夢を河に浮かべたろうか

吸い込まれそうな滝もさることながら、
研磨されたような丸みを帯びた”吹割の滝”の岩壁群は、
遥か山頂から生まれた清流が、緩やかに、激しく、
流れを繰り返し形成されてきたことを物語っており、
先駆者が進んだ轍を、先急いだり、つまずいたりした、
継承者たちの”積み重ね”のようだと、
ゴツゴツした乾いた岩肌の多摩川の源流を前にして振り返るのだった。

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